新しい市場を創るパートナー戦略。リモートワイプ製品の販売戦略とは|ワンビ株式会社
ベンダーインタビュー
パートナービジネス戦略

秋國:こんにちは。パートナーサクセスの秋國です。本日は、遠隔データ消去製品「TRUST DELETE」を提供するワンビ株式会社様にお伺いしています。今回お話をお聞きするのは、同社代表取締役社長 加藤 貴様です。最初に、加藤様の経歴や会社創業についてお聞かせください。
加藤:私は元々、ITとセキュリティ業界のトレンドマイクロ株式会社からキャリアをスタートさせ、その後サイボウズ株式会社へ移り、両社での業務を通してパートナービジネスを学びました。
トレンドマイクロ時代も試行錯誤しながらパートナービジネスを進めていましたが、サイボウズでは私自身がパートナービジネスを一から手がけました。
サイボウズでは、「Garoon」という商品をパートナービジネスで販売していました。その際、ディストリビューター、パートナー企業、リセラーなどを一次店、二次店、その他のように区分けし、その中でパートナーに色付けをして各業種ごとの得意なところと一次店に分けたうえで、それぞれ分担した役割のもとに販売をしました。
2006年にワンビを立ち上げましたが、最初の実稼働は私一人でした。その他のメンバーは米Microsoftや株式会社ライブドアなどの別企業に在籍しながら、副業でワンビの役員を務めていました。
ワンビ株式会社 代表取締役 加藤 貴 氏
2006年5月ワンビ株式会社を創業し、代表取締役に就任。
2002年8月入社:サイボウズ株式会社 マーケティング部 部長
グループウェア「ガルーン」のプロダクトマーケティングに携わりました。
1996年4月入社:トレンドマイクロ株式会社 プロダクトマネージャー
ウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」やその他のセキュリティ製品の企画を手がけました。
秋國:御社の役員の方々とは、どのようにして出会ったのでしょうか?
加藤:元々トレンドマイクロ株式会社やサイボウズ株式会社にいた人たちです。
サイボウズ株式会社を退職後に会社を組織化するまでは、私自身が個人事業主として経営コンサルティングや営業コンサルティング、マーケティングのコンサルティングなどを行っていました。しかし、顧客数が増え、昔はすべて訪問でお客様へお伺いしていたため、1人で対応することが時間的に厳しくなりました。そのため、仲間を集めて法人化をしようと決めました。
テレビとマイクがあって打ち合わせがしやすいという理由で、当時はよく新宿のカラオケ店で会議をしました。あるとき、1人10個ほどの商品企画を行い、当時のメンバー5人で50個のアイデアを出しあいました。当時出た50個のアイデアのうちの1つが、今も販売している「TRUST DELETE」です。
秋國:当時出たアイデアから、その後どのようにして製品化するに至ったのでしょうか。
加藤:「リモートワイプ」「遠隔データ消去」「MDM」という言葉もない時代に製品を作り、最初は法人ではなく個人向けに販売しました。個人向けに販売した理由は、当時は家電量販店に行くとソフトウェアが山積みの時代だったからです。ソフトウェアの流通は箱で買うことが当たり前の世界だったため、箱で買う会社様が弊社の製品を気に入ってくださり、製品化したのが最初でした。
本来、弊社の製品は個人よりも法人様向きだろうと思っており、法人向けに販売を始めたところからパートナーの仕組み作りを始めました。

秋國:その後「TRUST DELETE ASP」をリリースされましたが、こちらは今で言うSaaSでしょうか?
加藤:SaaSです。当時はほとんどが永久ライセンスの製品という中、弊社製品は使用ライセンスでの販売でした。使用ライセンスという販売方法の認知がなかったため、販売時は非常に苦労しました。
秋國:当時からすでにKDDI株式会社様へOEM提供もされていたかと思いますが、法人向けの提供に際しては、ITディストリビューター様経由の再販もされていたのでしょうか?
加藤:ITディストリビューター様へ提供して再販をしていただくケースと、例えば、KDDI株式会社様に弊社の製品を納入して、KDDI株式会社様に「KDDIモバイルセキュリティパック」という名前でOEM販売いただくケースの両方がありました。
秋國:遠隔でパソコンのデータを消去することについて、パートナー企業様の反応はどうでしたか?
加藤:我々の一番の競合は、ノートパソコンの持ち出し禁止文化です。最初はいらないという反応が多い状況でした。当時、ノートパソコンは会議室への持ち出しすら許されない状況で、遠隔でデータを消去する必要などなかったからです。
2005年に個人情報保護法が施行され、さまざまな企業での情報漏洩が問題視されたことで、各社ノートパソコンの持ち出しを禁止するようになりました。その結果、日本では技術力が不要な大型のパソコンばかりが売れるようになり、日本のベンダー企業は衰退していきました。それが悔しくて、弊社の製品を使って、ノートパソコンを本来の用途通り持ち出せるようにしたいと思いました。
現在はコロナ禍を経て、ノートパソコンの持ち出しが当たり前となったことから、遠隔でデータを消去するニーズは増えています。
秋國:当初ターゲットにしていた企業様の規模はどの程度だったのでしょうか?
加藤:最初は10人程度の中小企業を狙っていましたが、受注したのは1000人〜2000人、多ければ1万人程度の規模の会社でした。最初に弊社の製品を購入してくださったのは監査法人様で、その後に金融関係と証券会社様が続きました。
秋國:現状は何名体制でパートナービジネスに取り組まれているのですか?
加藤:パートナービジネスの体制は7人です。その中でマーケティングの業務も行っています。
秋國:大企業のお客様が多く、OEMも積極展開されている中、少数精鋭で手厚くフォローされているイメージがあります。
加藤:OEMについては経験値が元々ある上に、企業様と親しくさせていただいていることもあり、それほど大きな負荷にはなっていません。ITディストリビューター様の先のパートナー企業様はより注力してアプローチをするようにしています。
仮に1年間何もしなければ、パートナー企業様に弊社製品の存在自体を忘れられてしまいます。そのため、一定期間で勉強会を行ったり、パートナー企業様内の新生組織にご挨拶に伺ったり、「キャンペーンを一緒にやりましょう」「セミナーを一緒にやりましょう」とこまめにお声掛けしたりしながら、覚えていただけるようににしています。

秋國:パートナー企業様の特徴について聞かせてください。
加藤:パートナー企業様のブランドで弊社サービスをご販売いただくOEMパートナーと、弊社サービスをご販売いただくITディストリビューターです。
秋國:それぞれどのようなお取り組みをしているのでしょうか。
加藤:OEMパートナーはパソコンベンダー企業様が多いです。例えば、パナソニック株式会社様のパソコンだけにしかない機能、VAIO株式会社様のパソコンだけにしかない機能などがあるため、パートナー企業様毎にすべて仕様を変えています。
ハードやノートパソコン自体は基本的な仕様が決まっています。画面の大きさ、重さ、バッテリーの長さはそれぞれ違いますが、これだけでは差別化ができません。そこで、弊社の「TRUST DELETE」で差別化を図っていただけるようにしました。
秋國:あるOEM先で差別化できる機能が付くと、他のOEM先からも同様のご依頼があるのではないでしょうか?
加藤:その際はもう1つ製品を出す形で、順番に対応しています。
秋國:ITディストリビューター様とのコミュニケーションはどのようにされていますか?

加藤:ITディストリビューター様の営業担当の方に弊社の製品を知っていただき、その先のパートナー企業様に弊社サービスをお伝えいただくためのコミュニケーションを取っています。
秋國:その先のパートナー企業様とは、ITディストリビューター様からすると、どのような位置づけになるのでしょうか?
加藤:ITディストリビューターの先はシステムインテグレーションとサービスプロバイダーの2パターンがあります。
ハードウェアのOEMと同様にソフトウェアのOEMもあります。パートナー企業様が自社でSaaSを販売している場合は、弊社製品をアドオンとして販売いただいています。
秋國:システムインテグレーションのパートナー様とサービスプロバイダーのパートナー様に分けるのは、開始当初からの方針でしょうか?
加藤:当初から考えてはいましたが、同時には進められないため、案件ごとに開拓しています。例えば、サービスプロバイダー様やSIer様は信用金庫様に強いなど、それぞれ得意とする業界があります。
弊社はSaaSで展開はしていますが、中にはクラウドを使えない企業様もいらっしゃいます。そのような企業様に対して提供するサーバーソリューションについては、SIer様に担っていただいています。

秋國:パートナーアワードとして表彰などもされていますが、こちらも昔から行われていたのでしょうか?
加藤:そうです。私がトレンドマイクロ時代やサイボウズ時代に行っていたものを、そのまま弊社でも続けています。
秋國:パートナープログラムや契約上には対会社間の取り決めがあり、さらにパートナー企業様に対してマインドシェアを取るような働きかけや人間的な付き合いが必要です。普段、加藤様自身や営業の方が気を付けていることはありますか?
加藤:最後は人と人との付き合いなので、各営業担当者には機械的・事務的にならず、人間としてのお付き合いをするよう伝えています。他には、年1回のパートナー会議を行うことで、人対人でのコミュニケーションを取るようにしています。
秋國:パートナー様とのマーケティング手法についてお聞かせください。展示会、セミナーなど、費用をかける取り組みは普段から行っているのでしょうか?
加藤:普段からずっとではなく、パートナー企業様が持っている予算や営業担当者の目線の向きなどを指標に、タイミングを見ながら行っています。
ただ、パソコンベンダー企業様は年に2回、必ずパソコンを作らなければいけません。年2回行われる新製品発表会に一緒に参加させていただいています。
秋國:今後のパートナー開拓についてお聞かせください。今後も積極的に新規開拓をされるのでしょうか?
加藤:時代の流れに合わせて新規開拓に注力するのか、既存のパートナー企業との関係を深めることに注力するかを変えています。例えば、クラウド、AIなどの時流により、パートナー企業様の事業も変わるため、適宜タイミングを見ながら開拓し直しています。
秋國:未だに開拓し直すことがあるのですね。
加藤:そうですね。常に、時代の流れにあわせて、顧客ターゲットのニーズとパートナー企業様のメリットが合致するように、パートナー企業様との協業の座組や、そもそも協業するパートナー企業様を変えています。ただ、日本国内のITディストリビューター様については今は変えるつもりはありません。
秋國:今新しく開拓したいのはどのようなパートナー企業様なのでしょうか?
加藤:海外のベンダー企業とのアライアンスについては、長期的に取り組んでいます。
秋國:海外と日本のベンダー企業様で、アライアンスの組みやすさに違いはあるのでしょうか?
加藤:公衆向けにパソコンを販売している企業とは相性が良いです。コンシューマーをメインにしているようなところでは、リモートワイプ機能のメリットをあまり生かせないからです。法人向けにシフトしたい企業や法人向けに強みを感じている企業に注力するところは今後も変わりません。
秋國:AIをはじめとしたテクノロジーのトレンドがある中で、加藤様から見て組みやすそうな企業様はありますか?
加藤:弊社の製品がニッチなだけに、テクノロジーのトレンドとなっている企業様から見ると、弊社とは組みにくいと思います。
ニッチな製品だからこそ、お話を聞いていただける側面はたしかにあります。ただ、弊社の製品は新しいビジネスに乗っかる形で爆発的に広がるわけではありません。あまり流行り廃りに流されないよう、自分たちのターゲットを一つずつクリアしていくことで、市場を広げていこうと考えています。

秋國:最後に、今後の展望を教えてください。
加藤:2点あります。1点目は、パソコンベンダー企業様との協業拡大です。米Dell様や米Hewlett-Packard様、中Lenovo Corporation様など、海外のベンダー企業様にも採用いただきたいと思っています。
2点目は、データ消去をセキュリティのスタンダードにしたいと考えています。昨今は、パソコンだけでなく、テレビやエアコンなどの家電にも個人情報が含まれる時代です。現状ではデータを消去しても、外から見ると分からず、「消去した」という言葉を信じるしかありません。弊社の技術を使って「いつ、誰が、何のデータを消去したか」証明でき、かつその証明が必要な世界を目指しています。
秋國:そこに向けた今後の取り組みにも注目したいですね。
加藤:これから組織が拡大すれば、ツールやソリューションを用いた営業に取り組んでいこうと考えています。今後15人、20人とメンバーが増え、1人が声を上げたときに全員に届かない距離になれば、マネージャーの声をメンバーに届け、メンバーの声を吸い上げるツールが必要だと思っています。
パートナー企業についても同様で、今後さらにパートナーが拡大すれば、パートナーの管理にもツールを活用していきたいと考えています。
秋國:ありがとうございます。インタビューは以上です。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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